キャッシュレス途上国の日本!キャッシュレスが進まない日本の事情とは?

行政のキャッシュレス決済、税金など公金納付のキャッシュレス化は、行政特有の事情から世界各国と比較して遅れていると言われています。

今回はキャッシュレス途上国に甘んじる日本社会の事情から掘り下げ、政府によるキャッシュレス化への取り組みなどについて紹介しましょう。

日本のキャッシュレス決済比率は約3割

行政のキャッシュレス化について見ていく前に、日本社会のキャッシュレス化の現状について押さえておきましょう。

決済代金の支払いに現金を使わない「キャッシュレス化」は世界で着実に進みつつあります。

2016年時点では、比較的キャッシュレス化が進んでいるとみられる国々では、キャッシュレス決済比率が40~60%であるのに対して、日本は約20%にとどまっていました。

日本では、以前からクレジットカードネットワークの整備や支払い端末の標準化を推進し、2001年11月には、ICカード乗車券のサービスが開始されるなど、非接触端末の導入も積極的に進めてきました。

このように日本社会のキャッシュレス化に向けたインフラの整備という面では、他国に比べて遜色のない状況にあります。

2021年のキャッシュレス決済比率は32.5%に過ぎず、クレジットカード利用は27.7%と、3割にも達していません。

日本のキャッシュレス化が普及しない背景

キャッシュレス化に向けたインフラの整備が進んでいるにもかかわらず、日本社会のキャッシュレス決済の普及が遅れているのは、何故でしょうか?

日本社会の特殊性

経済産業省による「キャッシュレス・ビジョン」では、日本社会におけるキャッシュレス化が他国に比べて進んでいない理由のひとつとして「日本ならではの特殊性」を挙げています。

現金に対する信頼の高さ

盗難が少なく、現金を落として返ってくるなど、日本は「治安が良い」と言われています。

紙幣が綺麗で偽札が出回る危険性が少ないために、日本人の多くが現金を持つことに抵抗を感じていません。

ATMなどの利便性の高さ

ATMなどの金融インフラが整っているので、現金決済に不便を感じる事がありません。

また、店舗での現金取り扱いにも無駄がなく、クレジットカードによる決済よりも現金を使う方がわかりやすいと感じる人も多いようです。

カード払い=借金という根強い認識

日本ではキャッシュレス決済の多くがクレジットカードによる支払いになっていますが、クレジットカード払いは借金の一種であるという認識が根強く、それが現金による決済を好んで選択することにつながっているとの指摘もあります。

キャッシュレス決済への不安

2019年11月に実施された「お金に関する生活者意識調査」によると、キャッシュレス社会に反対する理由として「お金の感覚が麻痺しそう」「浪費しそう」「セキュリティに不安」とする回答が多かったようです。

ここでは、経済産業省が2017年3月に立ち上げた「クレジットカードデータ利用に関わるAPI連携に関する検討会」での意見も含めて、キャッシュレス決済に対する一般消費者の不安感についてまとめました。

使い過ぎへの危惧

キャッシュレス社会に反対する理由として「お金を使っている感覚がなくなってしまいそう」「ついつい使いすぎてしまいそう」など、浪費する事への不安を挙げています。

個人情報流出などセキュリティ面が不安

暗証番号や個人情報が流出する事への不安や、システムダウンへの懸念、システムの脆弱性をついた不正の可能性など、セキュリティ面の不安を挙げる意見もありました。

「知られない権利」の侵害

キャッシュレス化が進むことによって、購買関連のデータが収集・利用されることによって、知られない権利などが侵害されるのではないかという不安についての指摘もありました。

これは購買履歴などの個人情報が第三者に利用されることで、購買行動をコントロールされたり、知られたく無い嗜好や情報などを第三者に知られてしまうのではないかと不安に思う人が多いと言うことです。

年配者の「使いこなせない」という不安

キャッシュレス社会になったときに年配者が抱えることになる不安要素として、キャッシュレスによる決済手段を「使いこなせないのではないか」「時代に取り残せるのではないか」「キャッシュレスに慣れてなくて店に嫌がられるのでは」などもあります。

日本ならではの店舗事情

キャッシュレス化が進まない要因として、店舗側にも以下のような事情があります。

手数料が高い

小売店などでキャッシュレス決済を導入していない理由として「決済手数料の高さ」が挙げられます。

カード決済導入企業に於ける手数料率の平均値は3.09%でした。

この日本でのカード決済手数料率は、世界のキャッシュレス先進国と比べてかなり高率といえます。

たとえば中国の銀聯カードの手数料率は約0.3%~0.5%と言われています。

この高率な手数料負担があしかせとなって、小売店などのキャッシュレス決済の導入を阻んでいると言えるでしょう。

現金によるレジ処理が簡単

POSシステムによって、店舗での売上げなどの管理が容易となっていることや、現金によるレジの処理もそれほど難しくなく、逆にカード支払いでは、現金支払いでは発生しない利用控えの発行などの負担が発生する事になります。

この点もキャッシュレス決済が普及しない一因となっています。

まとめ

キャッシュレス決済比率について、将来的には世界最高水準の80%を目指すと言われている日本。

現在の水準からすると大変な目標に思えますが、それほどにキャッシュレス化がもたらす効果は大きく、労働力人口の減少など日本社会が直面する課題解決に向けて避けて通れない取り組みとみているのでしょう。

人々の不安をひとつ取り除きながら、その利便性が多くの人に歓迎される取り組みとなっていくことを期待しましょう。

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